かわず出ましたけど・・・

井の中の蛙が外に出てみて、感じること、想う事などつづってみたいと思ってます。

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僅かなとき3-2

志麻の母親にもう一度電話をかけて、携帯の番号を聞いた。

竹内志麻とは、ここ数年、年賀状のやり取りと、実家へ帰ったときに、気が向いたら家に電話をかけて、近くのファミレスでお茶をしたりする程度の付き合いだったからだ。

なぜ竹内志麻なのか、美緒は真綿で首をゆっくりと、絞められているように感じ始めていた。

ぐるぐると考えをめぐらせて、すっかり疲れ果てたころ、美緒の母が、静かにノックして、部屋に入ってきた。

「もう、4時よ。志麻ちゃんが、新大阪に着くころじゃないの?」
母も、父もまんじりともせずに、階下で同じ時間を過ごしていたのだと、美緒は思った。  自分だけじゃないんだと。

自分の目の前にある事しか見えていなかったことを、感じた。その瞬間に周りのものその全てが、色鮮やかに生気を帯びたように感じたのだった。

そうだ。何にも怖くない。私は私に自信を持とう。相手は、竹内志麻ではないか。何も幽霊や、凶悪犯なんかじゃない。幼馴染のしぃちゃんなのだ。

ゆっくりと話そう。鏡子とは誰で、なぜ、志麻が自分を連れてイギリスへ行くのか・・そうだ。両親とと一緒にお気に入りのレストランへ志麻を連れて行こう。

そう考えて、両親に伝えて、自分がはなしている間、口を挟まずに聞いていてくれるようにと頼んで、レストランに予約を入れてから、何度目かの電話の後、志麻から、美緒の携帯に連絡が入った。

「美緒ちゃん。メール見たで。いいのん?うれし~。らっきー。旅行の件もあるしなぁ。おじさんとおばさんが いはると調子でえへんけど、
うまい飯には変えられへんしな。元気にしとう?って今から会うっちゅうねんかぁ。あはは。いや!もうすぐ京都やわ。ほな、あとでね。」

志麻は機関銃のように一方的に話して電話を切った。

いつもこの調子である。あまり深く考えもなしに、行動する志麻は、美緒にとってまぶしい存在だった。

3人は少しだけドレスアップして、タクシーで新大阪駅に向かった。
夕方にしては珍しく道路はすいていて、思ったよりも早く駅に着き、
改札口で美緒が待つ間、両親は、タクシー乗り場に近いベンチに腰かけて志麻の出てくるのを待った。

しかしその間も父は美緒の姿が目に入るように、しっかりと気を配ってくれていたのだった。美緒も、母も、気づかなかったが・・・

暫らくして、志麻が、キャスターつきのバッグを引っ張りながら改札を出てくるのが見えた。キョロキョロと美緒を探しているのがわかった。

その後ろから、スーツを着た若い男が志麻に何か話しかけて、互いに会釈をして、男は美緒に背を向けたまま去っていった。

美緒はその様子を見て、何かひっかかるものを感じたが、志麻が美緒を見つけて駆け寄ってきたので、顔に意識的に笑顔を作って、志麻を迎えた。

後ろから両親も志麻に挨拶をしながら近づいて来ていた。
4人でタクシーに乗り込んで、同じ町内にある、フランス料理の名店に向かった。

車内では当たり障りの無い会話を美緒の母が志麻と話し続けていた。
車窓を流れる、見慣れた夜景を目で追いながら、美緒はマスターや なほのことを思っていた。
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テーマ:作品 - ジャンル:学問・文化・芸術

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