かわず出ましたけど・・・

井の中の蛙が外に出てみて、感じること、想う事などつづってみたいと思ってます。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

僅かなとき2-10

新大阪駅から、タクシーで夙川に戻るときにも、オーバーな位、神経を尖らせながら自分を気遣う両親の姿に美緒は多少の驚きを感じていた。

一人旅でイギリスに行くときも、勝手に準備をすすめる自分を、かまわずに居てくれた両親の姿、東京に出ると決めたときの両親との話し合いのときの言葉、そのどれもが、甦っては消えた。

自分は両親の深い思いのどれくらいを汲み取っていただろう。全く感知していなかったと言ってよい。私はなんと、慈愛に包まれた家庭の中に居たのだろうと、言葉にはできない、恥ずかしくなるような感情が押し寄せた。表現は難しいが、歓びという言葉が、心の中に浮かんできた。


久しぶりに実家に戻って、懐かしい家の匂いを嗅いで、美緒は、居心地のいい繭の中に入って、外界から守られて居る心地がした。
もうこれで大丈夫。3人でそう感じて、居間にどさっと、腰かけて、冷たいお茶を飲んだ。

「ああ、家の味だぁ。なんか、生き返るわぁ。」そういって、大げさに伸びをして見せた。すると母の君江が、待ってましたとばかりに、続けた。

「今日は、あんたの大好物作っといたんやで。昨日から仕込んで、ちょうど食べごろや。出血大サービスや。」そう言って、冷蔵庫からローストビーフの塊を取り出して、自慢げに顔の横に持ち上げて、美緒に見せた。

「やったぁ。お正月以外はめったに拝めへんお肉や!長尾の、おっちゃん、びっくりしとうやろな、家が、平日にローストビーフのお肉って・・・うふふ。」

そんな二人をにこやかに見つめながら、父は、着替えに2階へと上がっていった。

美緒は、早速、携帯を取り出し、マスターに無事着いたこと、お世話になったお礼をもう一度述べ、電話を切ろうとした。それを遮り、父が
代わり、丁重に礼を述べ、深い感謝の言葉を続けた。君江も何度も礼の言葉を話していた。そして、「奥さんが、代わって欲しいて言うてはるて、美緒ちゃん。」といいながら、美緒に携帯を返した。

電話口には、なほ が、出ていて、無事ついて何よりで、東京のほうのことは任せて、親に甘えなさいと、少し涙交じりのくぐもった声で、一方的に伝え、じゃあね、切るわよと、いって、切ってしまった。

なほ とのやり取りを話しながら、冷たいお茶をもういっぱい飲んで、座り直した美緒に、父から意外な言葉が飛び出した。

「お前の話を聞いて、即、ワシの伝手を辿ってメールアドレスから本人の特定を進めてもらうようにしたんや。ところが、何重にもブロックされとって、手間取ったそうや。結局、どこから送られたかは、不明。
さらに、気色の悪いことに、アメリカの政府のホストを経由したらしい痕跡があるっちゅうことや。ワシはネットのことはあんまり詳しないから、今、本多の息子にどういうことか、調べてもろてるねん。あと2,3日はかかるいうてたわ。あと一週間と2日、どこにもでんと、おとなしいに、しとるんやで、ええな。」

え。そんなに、動いてくれていたのか・・そう思って驚いたのもつかの間、なんだか大きな犯罪組織のボスとか、その逆で、捜査の証人とかを、目撃しちゃったってこと?あんな、腰の曲がったおばあさん・・
いや、すっと背筋を伸ばしたあの人は、若かった。年寄りなんかじゃなかった!美緒はふっとそう、確信的に閃いた。

「わかった。」そう言葉を次いだものの、実家に帰ったことで、実はもっと危険を招いたのではないかと、美緒の背中に一筋冷たいものが走った。



スポンサーサイト

テーマ:作品 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://blueorangekawazu.blog60.fc2.com/tb.php/54-4decad5d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。