かわず出ましたけど・・・

井の中の蛙が外に出てみて、感じること、想う事などつづってみたいと思ってます。

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僅かなとき2-2

 3人は慌てて家中の戸締りと、不審な物や人物が辺りにいないかを確かめた。互いに顔を見合わせ、かぶりを振った。
 マスターは、まず、落ち着こう。そういって、汗をかいたから、飲み物を持ってくるといいながら、リビングに手紙を置き、キッチンに入った。手紙はビニールの袋に入っていた。

 美緒は、なほ に促されて、手紙の置かれたテーブルの前のソファーに手紙から目を離さず、深く腰かけ、クッションを抱きしめた。汗はかいていたが、暑くはなく、冷たく痺れたようになっている全身の皮膚が、気持ち悪かった。

 なほ は只おろおろと美緒の傍らに腰かけた。

 しばらくしてマスターが3人分のアールグレイをアイスにしてソファーのところに現れた。

 美緒の前に紅茶を置きながら、手紙が投げ込まれた時間帯を推測して、大体午後2時から3時だろうと言い、今度は慎重に、全く指紋がつかないように、ビニールの袋に入れて、美緒の帰りを待っていたという。

携帯に電話をしても、二人とも繋がらず、それからの2時間ほどは、うろうろと手紙を開封してしまおうかと悩んでいたといった。

「開けても良いかい?美緒ちゃん。」とマスターが美緒の顔を覗き込んで、聞いた。

 美緒は、うなずくだけだった。

’沖島美緒様

 暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか、こちらも異常気象で、摂氏36.8度の日がありました。

 私がここに住み始めてから、初めてのことです。ロンドンの地下鉄は、エアコンディショナーが無いので、内部は50度近くになるのではないかと、ニュースでは伝えていました。

 さて、ほかでもないのですが、過日お手紙を差し上げてから、わたくしがもう一度あなたにお会いしようと、東京へ行くつもりだったのですが、こちらの都合がいろいろとあり、出向くことができそうにありません。


 それで、ご提案なのですが、使いの者に、お迎えに上がらせますので、どうぞ、英国まで、おいでください。お話したいことや、お聞きしたいことがあり、どうしても、おいでいただきたいのです。
 その前にまず、あなたの身辺を調べるようなことをしたことを、深くお詫びいたします。

 いかがでしょうか。ご連絡をお待ちいたしております。
ご連絡は下記のメールアドレスまで・・・

 なお、本日より2週間後の9月17日の午前8時に、あなたの居られるところへ、お迎えに上がります。


 それでは、お会いするのを楽しみにしております。

                       鏡子’

 なんなのだ。どういうことなのだ。こんな馬鹿げた手紙・・言葉は丁寧だが、内容は有無を言わせないものではないか。イギリスに来いだなんて・・・そう思いながら、美緒は、心に何か引っ掛かるものを感じた。

 マスターはさっき、2時から3時に投げ込まれたと言った。なのにそれから2時間も経ってから戸締りを確認したり、辺りを見回っていた。
おかしい。


 もしかしたら、・・・いやそんなはずは無い、こんなに良くしてくれた
人たちを疑うなんてどうかしている。自分は動揺のあまり錯乱しているのか。マスターを疑うなんて・・・

 しかし、その後も、美緒の頭の中には、同じ疑問がぐるぐると回り続けた。手紙の遠く感じる恐怖よりも、今ここにいてもいいのだろうか・・という身近な恐怖が美緒を支配し始めていた。



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テーマ:作品 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

ふふふ。マスター、ふふふ。皆でイギリスに行こう!

  • 2006/07/23(日) 14:35:48 |
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  • いくこ #-
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